馬太傳 第18章

1(その)とき弟子(でし)イエス(きたり)て曰けるは天國に(おい)(おほい)なる者は(たれ)ぞや
2イエス嬰兒(をさなご)(よび)かれらの(なか)(たて)
3(いひ)けるは(われ)まことに爾曹に(つげ)んもし(あらた)まりて嬰兒(をさなご)(ごと)くならずば天國(てんこく)(いる)ことを()
4(され)(おほよ)そこの嬰兒(をさなご)(ごと)く自ら(へりくだ)る者はこれ天國(てんこく)に於て(おほい)なる者なり
5(また)わが名の爲に(かく)(ごと)き一人の嬰兒(をさなご)(うく)る者は(われ)(うく)るなり
6(され)(われ)を信ずる此小子(ちひさきもの)の一人を(つまづ)かする者は磨石(ひきうす)をその(くび)(かけ)られて(うみ)(ふかみ)(しづめ)られん(かた)なほ(えき)なるべし
7()(わざはひ)なる(かな)そは(つまづ)かする(こと)をすればなり(つまづ)(こと)(かなら)(きた)らん(され)(つまづき)(きた)らす者は(わざはひ)なる(かな)
8()し爾の()なんぢの(あし)おのれを(つまづ)かさば(きり)て之を(すて)兩手(りやうて)兩足(りやうあし)ありて(つき)ざる()投入(なげいれ)られんよりは(あしなへ)または殘缺(かたは)にて(いのち)(いる)(よき)なり
9もし爾の()おのれを(つまづ)かさば拔出(ぬきいだ)して之を(すて)兩眼(りやうめ)ありて地獄(ぢごく)()投入(なげいれ)られんよりは一眼(かため)にて(いのち)(いる)(よき)なり○
10爾曹(なんぢら)この小子(ちひさきもの)の一人をも(つつし)みて輕視(あなどる)なかれ(われ)なんぢらに(つげ)ん彼等が天の使者(つかひ)は天にありて天に(いま)吾父(わがちち)(かほ)(つね)覿(みれ)ばなり
11それ人の子は(ほろび)たる者を(すく)はん(ため)(きた)れり
12爾曹(なんぢら)いかに(おも)ふや(ひと)もし百匹(ひやくひき)(ひつじ)あらんに其一匹(いつぴき)まよはば九十九を山に(おき)ゆきて(まよひ)(ひとつ)(たづね)ざる()
13(もし)たづねて之に(あは)(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告ん(まよは)ざる九十九の者よりも(なほ)その一を(よろこ)ばん
14(かく)(ごと)くこの小子(ちひさきもの)の一人の(ほろぶ)るは天に(いま)す爾曹が(ちち)尊旨(みこころ)(あら)
15もし兄弟(きやうだい)なんぢに罪を(をかさ)ばその(ひとり)ある(とき)(ゆき)(いさめ)よもし(なんぢ)(ことば)(きか)ばその兄弟(きやうだい)()べし
16もし(きか)ずば兩三人(りやうさんにん)(くち)(より)(あかし)をなし(すべて)(ことば)(さだめ)んが爲に一人(ひとり)二人(ふたり)(ともな)(ゆけ)
17もし彼等(かれら)にも(きか)ずば敎會(けうくわい)(つげ)よもし敎會(けうくわい)(きか)ずば之を異邦人(いはうじん)かつ税吏(みつぎとり)のごとき(もの)とすべし
18(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告ん(おほよ)そ爾曹が()(おい)(つなぐ)ことは天に(おいて)もつなぎ爾曹が()(おい)(とく)ことは天に(おいて)も釋べし
19(われ)また爾曹に(つげ)んもし爾曹のうち二人(ふたり)のもの()に於て心を(あは)何事(なにごと)にても(もとめ)ば天に(いま)吾父(わがちち)は彼等の(ため)に之を(なし)たまふべし
20(そは)わが()の爲に二三人の(あつま)れる(ところ)には(われ)も其中に(あれ)ばなり○
21厥時(そのとき)ペテロ イエス(きた)りて(いひ)けるは主よ幾次(いくたび)まで(わが)兄弟の(われ)に罪を(をか)すを(ゆるす)べきか七次(ななたび)まで()
22イエス彼に(いひ)けるは爾に七次(ななたび)とは(いは)じ七次を七十倍(しちじふばい)せよ
23是故に天國(てんこく)(わう)その(けらい)會計(くわいけい)調(しらべ)んとするが(ごと)
24調(しら)(はじめ)しとき千萬金(せんまんきん)負債(ひきおひ)したる者を(わう)曳來(ひききた)りしに
25(つくの)(かた)なかりければ之に(めい)じて其()その妻孥(つまこ)とあらゆる所有(もちもの)をみな(うり)(つくの)へと(いへ)
26その(けらい)ひれふして(いひ)けるは(こふ)われを(ゆるく)(たま)はば(みな)償ふべし
27(ここ)(おい)てその(けらい)の主(あはれ)みて之を(とき)その負債(ひきおひ)(ゆる)したり
28(けらい)いでて(おのれ)より(ぎん)一百の負債(ひきおひ)したる(とも)(あひ)ければ之を(とら)(のんど)をとり負債(ひきおひ)(かへ)せと(いふ)
29その友足下(あしもと)俯伏(ひれふし)(ねがひ)いひけるは(われ)(ゆるく)(たま)はば皆(つくの)ふべし
30(しか)るに之を(うけが)はずして(ゆき)その負債(ひきおひ)(つくの)ふまで彼を(ひとや)(いれ)
31(ほか)(とも)その(なせ)る事を()(はなは)(かなし)(ゆき)此事(このこと)(みな)その(しゆ)(つげ)しかば
32(しゆ)かれを(よび)て曰けるは(あし)(けらい)(なんぢ)われに(ねがひ)しに(より)(われ)その負債(ひきおひ)(ことごと)(ゆる)したり
33(わが)なんぢを(あはれ)みし(ごと)く爾も亦(とも)(あはれ)むべきに(あら)ずや
34その(しゆ)いかりて負債(ひきおひ)をみな(つくの)ふまで彼を獄吏(ひとやつかさ)(わた)せり
35(もし)おのおの其(こころ)より兄弟(きやうだい)(ゆるさ)ずば()が天の父も(また)なんぢらに(かく)(ごと)行給(なしたま)ふべし

馬太傳 第17章

1六日(むいか)(のち)イエス ペテロ ヤコブその兄弟(きやうだい)ヨハネ(ともな)ひ人を(さけ)高山(たかきやま)(のぼ)(たまひ)しが
2彼等(かれら)(まへ)にて其容貌(すがた)かはり其(かほ)日の(ごと)耀(かがや)き其(ころも)(しろ)(ひか)れり
3モーセエリヤ(あらは)れてイエス(とも)(かたり)
4ペテロ(こたへ)イエス(いひ)けるは主よ我儕(われら)ここに(をる)(よし)もし尊旨(みこころ)(かな)はば我儕に(みつ)(いほり)(つくら)せたまへ(ひとつ)は主のため一はモーセのため一はエリヤ(ため)にせん
5如此(かく)いへる時かがやける(くも)かれらを(おほ)(こゑ)雲より(いで)(いひ)けるは()我旨(わがこころ)(かな)ふわが愛子(あいし)なり爾曹(なんぢら)これに(きく)べし
6弟子(でし)これを(きき)(おほい)におそれ(たふ)(ふし)たり
7イエス(きた)りて彼等に()(つけ)おきよ(おそ)るる(なか)れと曰ければ
8()(あげ)しに(ただ)イエスのほか一人(ひとり)をも()ざりき○
9山を(くだ)る時にイエス彼等に(めい)じて人の()()より(よみがへ)るまでは爾曹(なんぢら)()し事を人に(つぐ)べからずと(いへ)
10その弟子(でし)とふて曰けるは(さら)エリヤ(さき)(きた)るべし學者(がくしや)(いへ)るは(なに)ぞや
11イエス(こたへ)て曰けるは()エリヤ(きたり)萬事(ばんじ)(あらた)むべし
12(され)(われ)なんぢらに(つげ)エリヤ(すで)(きたり)しに(ひと)これを(しら)ずただ(こころ)(まま)(かれ)(あしら)へり(かく)(ごと)く人の子もまた彼等(かれら)より苦難(くるしみ)(うく)べし
13(ここ)(おい)弟子(でし)バプテスマヨハネ(さし)(いひ)たまへるを(さと)れり○
14彼等(かれら)おほくの人の(をる)ところに(きたり)しに或人(あるひと)イエス(もと)にきたり(ひざまづ)
15曰けるは(しゆ)我子(わがこ)(あはれ)みたまへ癲癇(てんかん)にて屢々(しばしば)()(たふ)(みづ)(たふ)(はなは)(くるし)めり
16(これ)を爾の弟子(でし)携往(つれゆき)たれど(いや)すことを()ざりき
17イエス(こたへ)て曰けるは(ああ)信なき(まが)れる世なる(かな)われ何時(いつ)まで爾曹(なんぢら)と偕に(をら)んや(われ)いつまで爾曹を(しのば)んや(かれ)(わが)もとに携來(つれきた)
18(つひ)イエス(おに)(いまし)(たま)へば鬼いでて其()この(とき)より(いえ)たり
19(その)とき弟子(でし)ひそかにイエス(きた)り曰けるは我儕(われら)これを逐出(おひいだ)すこと(あた)はざりしは何故(なにゆゑ)
20イエス彼等に(いひ)けるは爾曹(しん)なきが(ゆゑ)なり(われ)まことに爾曹に(つげ)んもし芥種(からしだね)(ごと)(しん)あらば(この)山に此處(ここ)より彼處(かしこ)(うつ)れと(いふ)とも(かなら)(うつ)らん(また)なんぢらに(あたは)ざること(なか)るべし
21(され)ど此(たぐひ)祈禱(いのり)斷食(だんじき)(あら)ざれば(いづ)ることなし○
22ガリラヤ周流(めぐれる)ときイエス彼等(かれら)に曰けるは人の子(ひと)()(わた)され
23かつ(ころ)されて第三日(みつかめ)(よみがへ)るべし弟子(でし)これを(きき)(はなは)(かなし)めり○
24彼等(かれら)カペナウン(きた)れるとき納金(をさめきん)(あつむ)る者どもペテロ(きたり)て曰けるは爾曹(なんぢら)()納金(をさめきん)(いだ)さざる()
25(しから)ずと(いひ)ペテロ(いへ)(いり)しときイエスまづ(かれ)に曰けるはシモン(なんぢ)如何(いかに)おもふや世界(せかい)の王たちは(ぜい)および(みつぎ)(たれ)より(とる)(おのれ)の子よりか(ほか)(もの)よりか
26ペテロ(かれ)に曰けるは(ほか)(ひと)より(とる)なりイエス(かれ)に曰けるは(さら)ば子は(かかは)ることなし
27(され)ど彼等を(つまづ)かせざる(ため)に爾(うみ)(ゆき)(つり)(たれ)(はじめ)につる(うを)を取てその(くち)(ひら)かば金一(きんひとつ)()べし(それ)を取て(われ)と爾の(ため)に彼等に(をさめ)

馬太傳 第16章

1パリサイとサドカイの(ひと)きたりてイエス(こころみ)んとて天の休徴(しるし)を我儕に()せよと(いひ)ければ
2彼等(かれら)に答けるは爾曹(ゆふべ)には夕紅(ゆふやけ)(より)(はれ)ならんと(いひ)
3(あした)には朝紅(あさやけ)また(くもり)に由て今日(けふ)(あめ)ならんといふ僞善者(ぎぜんしや)(そら)景色(けしき)(わかつ)ことを(しり)(とき)休徴(しるし)(わか)(あた)はざる()
4姦惡(かんあく)なる世は休徴(しるし)(もとむ)るとも預言者(よげんしや)ヨナ休徴(しるし)のほか休徴を(あたへ)られじ(つひ)に彼等を(はな)れて(さり)ぬ○
5その弟子(でし)むかふの(きし)(いたり)しにパンを(たづさ)ふることを(わすれ)たり
6イエス彼等に(いひ)けるは戒心(こころ)してパリサイとサドカイの人の麫酵(ぱんだね)(つつし)めよ
7弟子(でし)たがひに(ろん)じて曰けるは(これ)パンを(たづさ)へざりし(ゆゑ)ならん
8イエスこれを(しり)て曰けるは信仰(しんかう)うすき者よ(なん)(たがひ)にパンを(たづさ)へざりしことを(ろん)ずる()
9(いま)(さと)らざるか五千人に(いつつ)のパンを(あたへ)しとき幾筐(いくかご)ひろひし()
10また四千人に(ななつ)のパンを(あたへ)しとき幾籃(いくかご)ひろひしや爾曹(なんぢら)これを(おぼえ)ざるか
11パリサイとサドカイの人の麫酵(ぱんだね)(つつし)めとはパンにつきて(いへ)るに(あら)ざるを(なん)(さと)らざる
12(ここ)(おい)弟子(でし)その麫酵(ぱんだね)にはあらでパリサイとサドカイの人の(をしへ)(つつし)めと(いへ)るなるを(さと)れり○
13イエス カイザリヤ ピリピ(かた)(いたり)しとき其弟子に問て曰けるは人々は(ひと)()(たれ)(いふ)
14彼等(かれら)いひけるは或人(あるひと)バプテスマヨハネ或人はエリヤ或人はエレミヤまた預言者(よげんしや)一人(ひとり)なりと(いへ)
15彼等に曰けるは爾曹(なんぢら)は我を(いひ)(たれ)とする()
16シモン ペテロ(こたへ)けるは(なんぢ)キリスト活神(いけるかみ)()なり
17イエス答て(かれ)に曰けるはヨナ()シモン爾は(さいはひ)なり蓋血肉(けつにく)なんぢに(しめ)せるに(あら)ず天に(いま)吾父(わがちち)なり
18(われ)また爾に(つげ)ん爾はペテロなり()敎會(けうくわい)をこの(いは)(うへ)(たつ)べし陰府(よみ)(もん)は之に(かつ)べからず
19(また)われ天國(てんこく)(かぎ)を爾に(あた)へん爾が()に於て(つなぐ)ことは天に(おい)ても(つなぎ)なんぢが()に於て(とく)ことは(てん)に於ても(とく)べし
20(つひ)に其弟子(でし)(いまし)めけるは(われ)キリストと人に(つぐ)ること(なか)れ○
21此時(このとき)よりイエスその弟子(でし)(おのれ)エルサレム(ゆき)長老(としより)祭司の長學者等(がくしやたち)より多の(くるし)みを(うけ)かつ(ころ)され第三日(みつかめ)(よみがへ)(など)なすべき事を(しめ)し始む
22ペテロ イエス(ひき)とめて主よ(よか)らず此事(このこと)なんぢに(きた)るまじと(いひ)ければ
23イエス反顧(ふりかへり)ペテロ(いひ)たまひけるはサタン我後(わがうしろ)退(しりぞ)け爾は(われ)(つまづ)(もの)なり(それ)なんぢは神の事を(おも)はず人の事を(おも)へり
24此時(このとき)イエスその弟子(でし)に曰けるは(もし)われに(したが)はんと(おも)ふ者は己を(すて)その十字架(じふじか)(おひ)て我に(したが)
25そは生命(いのち)保全(まつたう)せんとする者は之を(うしな)(わが)ために其生命(いのち)(うしな)ふ者は之を()べければ(なり)
26もし人全世界(せかいぢゆう)(うる)とも其生命(いのち)(うしな)はば(なん)(えき)あらん()また人なにを()て其生命(いのち)(かへ)んや
27それ人の子は(ちち)榮光(えいくわう)()てその使等(つかひたち)(とも)(きた)らん其時おのおのの(おこなひ)に由て(むく)ゆべし
28(まこと)爾曹(なんぢら)に告ん人の子その(くに)()(きた)るを(みる)までは(ここ)(たつ)ものの中に(しな)ざる者あるべし

馬太傳 第15章

1(とき)エルサレム學者(がくしや)とパリサイの(ひと)イエス(きたり)て曰けるは
2(なんぢ)の弟子(いにしへ)の人の遺傳(つたへ)(をかす)何故(なにゆゑ)(そは)食する時に其()(あらは)ざれば也
3(こたへ)て彼等に(いひ)けるは爾曹(なんぢら)は亦なんぢらの遺傳(つたへ)によりて神の(いましめ)(をかす)何故(なにゆゑ)
4それ(かみ)いましめて爾の父母を(うやま)へ又父母(ちちはは)(ののし)る者は(ころ)さるべしと宣給(のたま)へり
5(しか)るに爾曹(なんぢら)(いひ)(すべ)(ひと)父母に(むかひ)なんぢを(やしな)(べき)ものは禮物(そなへもの)なりと(いは)
6その父母を(うやま)はずとも(よし)とす(かく)て爾曹遺傳(つたへ)により神の誡を(むなし)くせり
7僞善者(ぎぜんしや)イザヤ(よく)なんぢらに(つい)預言(よげん)
8(たみ)(くち)にて我に(ちかづ)(くちびる)にて(われ)(うやま)へども其心は(われ)(とほざ)かり
9人の誡を(をしへ)となして(いたづ)らに我を(はい)すと(いへ)
10イエス人々を(よび)て彼等に(いひ)けるは(きき)(さと)
11(くち)に入るものは人を(けが)さず(くち)より(いづ)るものは(これ)人を(けが)すなり
12弟子(でし)きたりてイエス(いひ)けるはパリサイの人この(ことば)(きき)厭棄(いとひすつ)ると爾(しる)
13(こたへ)て曰けるは()が天の(ちち)(うゑ)ざる(もの)はみな(ぬか)るべし
14彼等を(すて)おけ瞽者(めしひ)(てびき)する瞽者(めしひ)なり(もし)めしひのもの瞽者(めしひ)(てびき)せば二人(ふたり)とも(みぞ)(おつ)べし
15ペテロ イエス(こたへ)て曰けるは此(たとへ)を我儕に(とき)たまへ
16イエス(いひ)けるは爾曹(なんぢら)(いま)(さとら)ざる()
17(すべ)(くち)(いる)ものは(はら)(とほり)(かはや)(おつ)るを未だ(しら)ざるか
18(くち)より(いづ)るものは(こころ)より(いづ)これ人を(けが)すもの也
19(そは)心より(いづ)る所の惡念(あくねん)凶殺(きようさつ)姦淫(かんいん)苟合(こうがう)盜竊(たうせつ)妄證(もうしやう)謗讟(ばうとく)
20此等(これら)は人を(けがす)ものなり(され)ども手を(あらは)ずして(くら)ふは人を(けが)さず
21イエス(ここ)(さり)ツロシドンの地に(ゆき)けるに
22()(すめ)カナン(をんな)いでて(よば)はり(いひ)けるは(しゆ)ダビデ()(われ)を憫み(たま)(わが)むすめ(おに)(つか)れて(いた)(くるし)めり
23イエス一言(ひとこと)(かれ)に答ざりしかば其弟子(でし)きたり(こふ)(いひ)けるは我儕(われら)(あと)より(よば)はるば(ゆゑ)(かれ)(さら)(たま)
24(こたへ)て曰けるはイスラエル(いへ)(まよ)へる(ひつじ)(ほか)に我は(つかは)されず
25(をんな)きたり(はい)して(いひ)けるは主よ(われ)(たすけ)たまへ
26答けるは兒女(こども)のパンを(とり)(いぬ)投與(なげあた)ふるは(よろし)からず
27婦いひけるは主よ(しかり)されど(いぬ)もその主人(しゆじん)(ぜん)より(おつ)(くづ)(くらふ)なり
28(つひ)イエス答て(いひ)けるは(をんな)(なんぢ)の信仰は(おほい)なり(ねがひ)(ごと)く爾に(なる)べし此時(このとき)より其(むすめ)いえたり○
29イエス(ここ)(さり)ガリラヤ海邊(うみべ)にゆき山に(のぼ)りて()せり
30(おほく)の人々跛者(あしなへ)瞽者(めしひ)瘖者(おふし)殘缺者(かたは)および各樣(さまざま)疾病(やまひ)ある者を(ともな)ひきたりイエス足下(あしもと)(おき)ければ(すなは)ち之を(いや)しぬ
31(ここ)(おい)瘖者(おふし)はものいひ殘疾(かたは)はいえ跛者(あしなへ)はあゆみ瞽者(めしひ)(みえ)たるを人々()(あやし)イスラエルの神を(あがめ)たり○
32イエスその弟子(でし)(よび)て曰けるは(われ)この衆人(ひとびと)(あはれ)彼等(かれら)われと(とも)(をる)こと三日(みつか)にして(くら)ふものなし(うゑ)させて(さら)しむることを(このま)(おそら)くは途間(みち)にて(なやま)
33その弟子(でし)かれに曰けるは()にて(この)おほくの人に(あか)するほどのパンを何處(いづこ)より()んや
34イエス彼等に(いひ)けるはパン幾何(いくつ)あるや(こたへ)けるは(ななつ)些少(すこし)(うを)あり
35イエス人々に(めい)じて()(すわら)しめ
36七のパンと魚を(とり)(しや)し之を(わり)て其弟子(でし)(あたへ)しかば弟子(でし)これを人々(ひとびと)(あた)
37食てみな(あき)たり(あまり)(くづ)(ひろひ)しに七の(かご)(みて)
38之を(くらへ)るもの(をんな)孩子(こども)(ほか)に四千人ありき
39イエス人々を(さら)しめ(ふね)(のり)マグダラ(さかひ)(いた)れり

馬太傳 第14章

1(その)ころ分封(わけもち)(きみ)ヘロデ イエス聲名(うはさ)(きき)
2その(しもべ)(いひ)けるは(これ)バプテスマヨハネなり(かれ)死より(よみがへ)りたり(ゆゑ)(ふしぎ)なる(わざ)(おこな)ふなり
3(さき)ヘロデその兄弟(きやうだい)ピリポ(つま)ヘロデヤの事に(より)ヨハネ(とら)(しばり)(ひとや)(いれ)たり
4()ヨハネ ヘロデに此(をんな)(めと)るは(よろ)しからずと(いひ)しに(よる)
5(かれ)ヨハネ(ころ)さんと(おもへ)でも(たみ)これを預言者(よげんしや)とするにより彼等(かれら)(おそれ)たりしが
6ヘロデ誕生(たんじやう)()(いは)へる時ヘロデヤ(むすめ)その座上(ざじやう)にて(まひ)をなしヘロデ(よろこ)ばせければ
7(いか)なる(もの)にても(もとめ)(まかせ)(あたへ)んとヘロデ之に(ちかひ)たり
8(むすめ)その(はは)(すすめ)ありしに(より)バプテスマヨハネ(くび)(ぼん)(のせ)(ここ)(たまは)れと(いふ)
9(うれへ)けれども(すで)(ちかひ)たると(せき)(つらな)れる者の(ため)(あたふ)ることを(めい)
10(すなは)ち人を(つかは)(ひとや)に於てヨハネ(くび)(きら)
11その(くび)(ぼん)(のせ)て女に(あたへ)ければ(むすめ)は之をその(はは)(ささげ)たり
12ヨハネ弟子等(でしたち)きたりて(しかばね)(とり)これを(はうむ)(ゆき)イエス(つぐ)
13イエスこれを(きき)て人をさけ(ふね)(のり)其處(そこ)(さり)さびしき(ところ)往給(ゆきたま)ひしが衆人(ひとびと)ききて歩行(かち)にて彼に(したが)へり○
14イエス(いで)(おほく)の人を()て之を(あはれ)み其(やめ)(もの)(いや)せり
15()くるる時その弟子(でし)きたりて(いひ)けるは(ここ)寂寞(さびしき)ところにして(とき)もはや(おそ)諸邑(むらむら)(ゆき)て自ら(しよく)(もとめ)させん(ため)に人々を(さら)しめよ
16イエス彼等(かれら)に曰けるは人々(ゆか)ずとも(よし)なんぢら(これ)に食を(あたへ)
17(こたへ)けるは我儕(ここ)にただ(いつつ)のパンと(ふたつ)(うを)あるのみ
18イエス(いひ)けるは(それ)(ここ)携來(もちきた)
19(つひ)衆人(ひとびと)(めい)じて(すわら)しめ五のパンと二の(うを)をとり天を(あふぎ)(しや)しパンを(わり)弟子(でし)にあたふ弟子(でし)これを衆人(ひとびと)(あたへ)
20みな(くらひ)(あき)その(あまり)たる(くづ)(ひろひ)しに十二の(かご)(みち)たり
21(くらひ)し者は(をんな)幼童(こども)(ほか)おほよそ五千人(ごせんにん)なりき○
22(やが)イエス衆人(ひとびと)(かへ)さんとして其弟子(でし)(しひ)(ふね)にのせ(むかふ)(きし)(さき)(わたら)しむ
23(かく)衆人(ひとびと)(かへ)しければ祈禱(いのり)せんとて(ひそか)に山に(のぼ)()くれて(ひとり)そこに(いま)せり
24舟は海中(わだなか)(あり)逆風(ぎやくふう)(ため)(なみ)(ただよ)はさる
25()四時(よじ)ごろイエス(うみ)(うへ)(あゆみ)て之に(いたり)しに
26弟子(でし)その(うみ)(うへ)(あゆめ)るを()(おどろ)()變化(へんげ)(もの)ならんと(いひ)(おそ)(さけび)たり
27イエス(やが)彼等(かれら)に曰けるは心(やす)かれ(われ)なり(おそ)るる(なか)
28ペテロ答て曰けるは主よ()し爾ならば(われ)(めい)じ水を(ふみ)て爾の(もと)(いたら)しめよ
29(きたれ)曰給(いひたま)ひければペテロ(ふね)より(おり)イエス(もと)(いたら)んとて(なみ)(うへ)(あゆみ)たれど
30(かぜ)(はげし)きを()(おそ)(しづみ)かかりければ(しゆ)よ我を(たすけ)たまへと(いふ)
31イエス(やが)て手を(のべ)これを(とらへ)て曰けるは信仰(しんかう)うすき者よ(なん)(うたが)ふや
32(とも)に舟に(のり)ければ(かぜ)しづまりぬ
33舟に(をり)し者ちかよりて彼を(はい)(いひ)けるは(まこと)に爾は(かみ)()なり○
34(つひ)(わたり)ゲネサレの地に(いたり)しかば
35其處(そのところ)の人々イエス(しり)(あまね)四方(しはう)に人を(つかは)(すべ)(やまひ)の者を(たづさ)へ來らしむ
36(ただ)その(ころも)(すそ)(さは)らんことをイエス(ねが)へり(さはり)し者は(すなは)ちみな(いや)されたり

馬太傳 第13章30節~58節

30收穫(かりいれ)まで(ふたつ)ながら(そだて)おけ(われ)かりいれの(とき)まづ稗子(からすむぎ)(ぬき)あつめて(やか)(ため)に之を(つか)(むぎ)をば()(くら)(をさめ)よと(いは)ん○
31また(たとへ)彼等(かれら)(しめ)し曰けるは天國は芥種(からしだね)(ごと)(ひと)これを(とり)(はたけ)(まけ)
32(よろづ)(たね)よりは(ちひさ)けれども(そだち)ては(ほか)(くさ)より(おほい)にして天空(そら)(とり)きたり其(えだ)宿(やどる)ほどの()となる(なり)
33また(たとへ)を彼等に(かたり)けるは天國は麫酵(ぱんだね)の如し(をんな)これをとり三斗(さんと)()(なか)(かく)せば(ことごと)脹發(ふくれいだ)すなり
34イエス(たとへ)をもて(すべ)此等(これら)の事を衆人(ひとびと)(かたり)たまへり(たとへ)にあらざれば(かた)(たま)はず
35これ預言者(よげんしや)(より)(われ)譬を(まうけ)(くち)(ひら)()(はじめ)より(かくれ)たる事を言出(いひいだ)さんと(いは)れたるに(かなは)せん爲なり○
36(つひ)イエス衆人(ひとびと)(かへ)して(いへ)(いれ)り其弟子(でし)きたりて(いひ)けるは畑の稗子(からすむぎ)の譬を我儕に(とき)たまへ
37(これ)に答て(いひ)けるは美種(よきたね)播者(まくもの)は人の子なり
38(はたけ)はこの世界(せかい)なり美種(よきたね)(これ)天國の諸子(こども)なり稗子は惡魔(あくま)子類(こどもら)なり
39(これ)をまく(あだ)惡魔(あくま)なり收穫(かりいれ)()(をはり)なり刈者(かるもの)は天の使等(つかひたち)なり
40稗子(からすむぎ)(あつめ)()(やかる)(ごと)(この)世の末に(おい)ても(かく)(ごと)くなるべし
41(ひと)()その使者(つかひ)たちを(つかは)して其(くに)(うち)より(すべ)躓礙(つまづき)となる(もの)また(あく)をなす人を(あつめ)
42(これ)()()投入(なげいる)べし其處(そこ)にて哀哭(かなしみ)切齒(はがみ)すること(あら)
43(この)とき義人(ただしきひと)は其(ちち)(くに)(おい)()(ごと)(かがや)かん(みみ)ありて(きこ)ゆる者は(きく)べし○
44また天國(てんこく)(はたけ)(かくれ)たる(たから)の如し(ひと)みいださば之を(かく)(よろこ)(かへ)り其所有(もちもの)(ことごと)(うり)てその(はたけ)(かふ)なり○
45また天國は(よき)眞珠を求んとする商人(あきひと)の如し
46(ひとつ)(あたひ)たかき眞珠(しんじゆ)見出(みいだ)さばその所有(もちもの)(ことごと)(うり)て之を(かふ)なり○
47また天國(てんこく)(うみ)(うち)各樣(さまざま)(うを)をとる(あみ)の如し
48(すで)(みつ)れば(きし)(ひき)あげ(すわり)てその(よき)ものを(うつは)にいれ(あしき)ものを(すつ)るなり
49()(をはり)(おい)ても(かく)(ごとく)ならん天の使等(つかひたち)いでて義者(ただしきもの)(うち)より惡者(あしきもの)(とり)わけ
50之を()()投入(なげいる)べし其處(そこ)にて哀哭(かなしみ)切齒(はがみ)すること(あら)ん○
51イエス彼等(かれら)に曰けるは此事(このこと)をみな(さとり)しや彼に曰けるは(しゆ)(しかり)
52イエス彼等に曰けるは(され)天國(てんこく)について(をしへ)られたる學者(がくしや)(あたら)しき(もの)(ふる)(もの)とを其(くら)より(いだ)(いへ)(あるじ)の如し○
53イエスこの(たとへ)言畢(いひをはり)(ここ)(さり)
54その故土(ふるさと)にいたり會堂(くわいだう)にて(をしへ)しに人々(あやし)み曰けるは此(ひと)智慧(ちゑ)(ふしぎ)なる(わざ)何處(いづこ)より(きた)るや
55これ木匠(たくみ)()にあらずや其(はは)マリアその兄弟(きやうだい)ヤコブ ヨセ シモン ユダ(あら)ずや
56その妹等(いもうとたち)はみな我儕(われら)(とも)(ある)(あら)ずや(しか)るに(この)人の(すべ)此等(これら)の事は何處(いづこ)より(きたり)しや
57(つひ)(いとふ)て之を(すつ)イエス彼等(かれら)に曰けるは預言者(よげんしや)は其故土(ふるさと)その(いへ)(ほか)に於て(たふと)まれざることなし
58彼等が(しん)ずることなきに由て(おほく)(ふしぎ)なる(わざ)(ここ)行給(なしたま)はざりき

馬太傳 第13章1節~29節

1この()イエス(いで)海邊(うみべ)()せしに
2多の人々彼に(あつま)(きたり)ければイエス(ふね)(のり)()(すべて)の人々は(きし)(たて)
3イエス(たとへ)()多端(さまざま)(こと)を人々に(かたり)(たね)まく者(まき)(いで)しが
4(まけ)るとき(みち)(ほとり)(おち)し種あり空中(そら)(とり)きたりて(ついば)(つく)せり
5また(つち)うすき磽地(いしぢ)(おち)し種あり(ただち)萌出(はえいで)たれど
6日の(いで)しとき(やか)れしかば()なきが(ゆえ)(かれ)たり
7また(いばら)(なか)に遺し(たね)あり(いばら)そだちて之を(ふさ)げり
8また沃壌(よきち)(おち)し種あり()(むす)べること(あるひ)百倍(ひやくばい)あるひは六十倍(ろくじふばい)あるひは三十倍(さんじふばい)せり
9(みみ)ありて(きこ)ゆる者は(きく)べし
10弟子等(でしたち)きたりて(かれ)に曰けるは何故(なにゆえ)(たとへ)をもて彼等(かれら)(かた)(たま)ふや
11(こたへ)(いひ)けるは爾曹(なんぢら)には天國の奥義(おくぎ)(しる)ことを(あたへ)たまへど彼等には(あた)(たまは)ざれば也
12それ(もて)(もの)(あたへ)られてなほ(あまり)あり無有者(もたぬもの)はその(もて)(もの)をも(とら)るる也
13彼等は()ても()(きき)ても(きか)(さとら)ざるが(ゆゑ)(われ)譬を()て彼等に(かた)れり
14イザヤ預言(よげん)(なんぢ)(きけ)ども(さと)らず(みれ)ども()
15(そは)この(たみ)目にて見(みみ)にてきき心にて(さと)(あらた)めて(われ)(いや)されんことを(おそれ)その心を(にぶく)(みみ)(をほ)ひ目を(とぢ)たりと(いひ)しに(かな)へり
16(され)ど爾曹の目は()爾曹の(みみ)(きく)(ゆゑ)(さいはひ)なり
17われ(まこと)に爾曹に告ん(おほく)預言者(よげんしや)義人(ただしきひと)は爾曹が(みる)ところを()んとしたりしが(みる)ことを()ず爾曹が(きく)ところを(きか)んとしたりしが(きく)ことを()ざりき
18(ゆゑ)に爾曹播種(たねまき)の譬を(きけ)
19天國の(をしへ)(きき)(さと)らざれば惡鬼(あしきもの)きたりて其(こころ)(まか)れたる(たね)(うば)(これ)路の(ほとり)(まき)たる種なり
20磽地(いしぢ)(まか)れたる(たね)は是(をしへ)(きき)(すみや)かに(よろこ)(うく)れども
21(おのれ)()なければ暫時(しばし)のみ(をしへ)の爲に患難(くわんなん)あるひは(せめ)らるる事の(おこ)る時は(たちま)(みち)(つまづ)く者なり
22また(いばら)(なか)(まか)れたる種は(これ)敎を(きけ)ども此()思慮(こころづかひ)貨財(たから)(まどひ)(をしへ)(ふさが)れて(みの)らざる者なり
23沃壌(よきち)(まか)れたる(たね)は是(をしへ)(きき)(さと)()を結こと(あるひ)百倍(ひやくばい)あるひは六十倍(ろくじふばい)あるひは三十倍(さんじふばい)する(もの)なり○
24また(たとへ)を彼等に(しめ)して曰けるは天國(てんこく)は人(はたけ)美種(よきたね)(まく)()たり
25人々の(いね)たる(うち)に其(あだ)きたり(むぎ)(なか)稗子(からすむぎ)(まき)(され)
26(なへ)はえ(いで)(みのり)たるとき稗子(からすむぎ)(あらは)れたり
27主人(あるじ)(しもべ)きたりて(いひ)けるは(しゆ)(はたけ)には美種(よきたね)(まか)ざりしか如何(いかに)して稗子(からすむぎ)ある()
28(しもべ)に曰けるは敵人(あだびと)これを(なせ)り僕主人(あるじ)に曰けるは(しか)らば我儕(われら)ゆきて之を(ぬき)あつむるは(よき)
29(いな)おそらくは爾曹稗子(からすむぎ)(ぬき)あつめんとて(むぎ)をも(とも)(ぬく)べし