馬太傳 第25章
1其(その)とき天國は燈(ともしび)を執(とり)て新郎(はなむこ)を迎(むかへ)に出(いづ)る十人の童女(むすめ)に比(なぞら)ふべし
2その中(うち)の五人は智(かしこ)く五人は愚(おろか)なり
3愚(おろか)なる者(もの)は其燈(ともしび)をとるに油(あぶら)を携(たづさ)へざりしが
4智(かしこ)き者は其燈(ともしび)と兼(とも)に油(あぶら)を器(うつは)に携(たづさ)へたり
5新郎(はなむこ)おそかりければ皆假寢(かりね)して眠(ねむ)れり
6夜半(よなか)ばに叫(さけ)びて新郎(はなむこ)きたりぬ出(いで)て迎(むかへ)よと呼聲(よぶこゑ)ありければ
7この童女(むすめ)ども皆(みな)おきて其燈(ともしび)を整(ととの)へたるに
8愚(おろか)なるもの智(かしこ)き者に曰(いひ)けるは我儕(われら)の燈熄(きえ)んとす願(ねがは)くは爾曹(なんぢら)の油(あぶら)を我儕に分予(わけあたへ)よ
9智(かしこ)きもの答(こたへ)て曰けるは我儕と爾曹(なんぢら)とに恐(おそら)くは足(たる)まじ爾曹賣者(うるもの)に往(ゆき)て己(おの)が爲に買(かへ)
10かれら買(かは)んとて往(ゆき)しとき新郎(はなむこ)きたりければ既(すで)に備(そなへ)たる者は之と偕(とも)に婚筵(こんえん)に入(いり)しかば門(もん)は閉(とぢ)られたり
11斯(かく)て後(のち)その餘(ほか)の童女(むすめ)きたりて曰(いひ)けるは主(しゆ)よ主よ我儕の爲(ため)に開(ひらき)たまへ
12答(こたへ)て我(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告ん我(われ)は爾曹を知(しら)ずと曰(いへ)り
13然(され)ば怠(おこた)らずして守(まも)れ爾曹その日(ひ)その時(とき)を知(しら)ざれば也(なり)○
14また天國(てんこく)は或(ある)人の旅行(たびだち)せんとして其僕(しもべ)をよび所有(もちもの)を彼等(かれら)に預(あづく)るが如(ごと)し
15各人(おのおの)の智慧(ちゑ)に從(したが)ひて或者(あるもの)には銀(ぎん)五千(ごせん)或者には二千或者(あるもの)には一千を予(あたへ)おき直(ただち)に旅行(たびだち)せり
16五千の銀(ぎん)を受(うけ)し者は往(ゆき)て之を貿易(はたらか)し他(ほか)に五千を得(え)たり
17二千を受(うけ)し者もまた他(ほか)に二千を得(え)たり
18然(しか)るに一千(いつせん)を受(うけ)し者は往(ゆき)て地(ち)を堀(ほり)その主(しゆ)の金(かね)を藏(かく)せり
19歴久(ほどへ)て後(のち)その僕等(しもべたち)の主(しゆ)かへりて彼等(かれら)と會計(くわいけい)せしに
20五千の銀(ぎん)を受(うけ)し者その他(ほか)に五千の銀を携來(もちきた)りて主よ我(われ)に五千の銀(ぎん)を預(あづけ)しが他(ほか)に五千の銀(ぎん)を儲(まうけ)たりと曰(いひ)ければ
21主(しゆ)かれに曰けるはああ善(ぜん)かつ忠(ちゆう)なる僕(しもべ)ぞ爾寡(わづか)なる事に忠なり我(われ)なんぢに多(おほき)ものを督(つかさど)らせん爾の主人(あるじ)の歡樂(よろこび)に入(いれ)よ
22二千の銀を受(うけ)し者きたりて主(しゆ)よ我に二千の銀(ぎん)を預(あづけ)しが他(ほか)に二千の銀を儲(まうけ)たりと曰(いひ)ければ
23主(しゆ)かれに曰けるは於(ああ)善かつ忠(ちゆう)なる僕(しもべ)ぞよなんぢ寡(わづか)なる事に忠(ちゆう)なり我(われ)なんぢに多(おほき)ものを督(つかさど)らせん爾の主人(あるじ)の歡樂(よろこび)に入(いれ)よ
24また一千の銀(ぎん)を受(うけ)し者きたりて曰(いひ)けるは主(しゆ)よ爾は嚴人(きびしきひと)にて播(まか)ざる處(ところ)より穫(かり)ちらさざる處(ところ)より斂(あつむ)ることを我(われ)は知(しる)
25故(ゆゑ)に我懼(おそれ)てゆき主(しゆ)の一千の銀(ぎん)を地(ち)に藏(かく)し置(おけ)り今(いま)なんぢ爾の物(もの)を得(え)たり
26その主(しゆ)こたへて曰(いひ)けるは惡(あしく)かつ惰(おこた)れる僕(しもべ)ぞ爾わが播(まか)ざる處よりかり散(ちら)さざる處(ところ)より斂(あつむ)ることを知(しる)か
27然(しか)らば我(わ)が金(かね)を兌換舖(りやうがへや)に預置(あづけおく)べきなり然(さら)ば我(わ)が歸(かへり)たるとき本(もと)と利(り)とを受(うく)べし
28是故(このゆゑ)に彼(かれ)の一千の銀(ぎん)を取(とり)て十千(じふせん)の銀ある者に予(あたへ)よ
29それ有(もて)る者は予(あたへ)られて尚(なほ)あまりあり無有者(もたぬもの)はその有(もて)る物(もの)をも奪(とら)るる也
30無益(むえき)なる僕(しもべ)を外(そと)の幽暗(くらき)に逐(おひ)やれ其處(そこ)にて哀哭(かなしみ)切齒(はがみ)すること有(あら)ん○
31人の子おのれの榮光(えいくわう)をもて諸(もろもろ)の聖使(きよきつかひ)を率來(ひきゐきた)る時はその榮光(えいくわう)の位(くらゐ)に坐(ざ)し
32萬國(ばんこく)の民(たみ)をその前(まへ)に集(あつ)め羊(ひつじ)を牧者(かふもの)の綿羊(めんやう)と山羊(やぎ)とを別(わかつ)が如く彼等(かれら)を別(わか)ち
33綿羊(めんやう)をその右(みぎ)に山羊(やぎ)をその左(ひだり)に置(おく)べし
34斯(かく)て王(わう)その右(みぎ)にをる者に云(いは)ん吾父(わがちち)に惠(めぐま)るる者よ來(きた)りて創世(よのはじめ)より以來(このかた)なんぢらの爲に備(そなへ)られたる國(くに)を嗣(つげ)
35盖(そは)なんぢら我(わ)が飢(うゑ)し時われに食(くは)せ渴(かわき)しとき我(われ)に飮(のま)せ旅(たび)せし時われを宿(やど)らせ
36裸(はだか)なりし時われに衣(き)せ病(やみ)しとき我(われ)をみまひ獄(ひとや)に在(あり)しとき我(われ)に就(きた)ればなり
37是(ここ)に於(おい)て義者(ただしきもの)かれに答て云(いは)ん主よ何時(いつ)なんぢの飢(うゑ)たるを見(み)て食(くは)せまた渴(かわき)たるに飮(のま)しし乎(や)
38何時(いつ)主の旅(たび)したるを見て宿(やど)らせ又裸(はだか)なるに衣(きせ)し
39何時(いつ)主の病(やみ)また獄(ひとや)に在(ある)を見て爾(なんぢ)に至(いた)りし乎(や)
40王(わう)こたへて彼等(かれら)に曰ん我(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告ん既(すで)に爾曹わが此兄弟(きやうだい)の最微者(いとちひさきもの)の一人に行(おこな)へるは即(すなは)ち我(われ)に行(おこなひ)しなり
41遂(つひ)にまた左(ひだり)にをる者に曰ん罰(つみ)せらるべき者よ我(われ)を離(はな)れて惡魔(あくま)と其使者(つかひ)の爲に備(そなへ)たる熄(きえ)ざる火(ひ)に入(いれ)よ
42盖(そは)なんぢら我(わ)が飢(うゑ)し時われに食(くは)せず渴(かわき)しとき我(われ)に飮(のま)せず
43旅(たび)せし時われを宿(やど)らせず裸(はだか)なりし時われに衣(きせ)ず病(やみ)また獄(ひとや)に在(あり)し時われを顧(みまは)ざれば也
44是(ここ)に於(おい)て彼等(かれら)また答(こたへ)て曰ん主(しゆ)よ何時(いつ)なんぢの飢(うゑ)また渴(かわき)また旅(たび)し又裸(はだか)また病(やみ)また獄(ひとや)に在(ある)を見て主(しゆ)に事(つかへ)ざりし乎(や)
45其とき王(わう)こたへて彼等(かれら)にいはん我まことに爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん此最微者(いとちひさきもの)の一人に行(おこな)はざるは即(すなは)ち我に行(おこな)はざりし也
46此等(これら)の者は窮(かぎり)なき刑罰(けいばつ)にいり義者(ただしきもの)は窮(かぎり)なき生命(いのち)に入(いる)べし
馬太傳 第24章
1イエス殿(みや)より出(いで)ければ其(その)弟子すすみて殿(みや)の搆造(かまへ)を彼に觀(み)せんとしたりしに
2イエス彼等(かれら)に曰けるは爾曹(なんぢら)すべて此等(これら)を見(み)ざるか我(われ)まことに爾曹に告ん此處(このところ)に一(ひとつ)の石(いし)も石の上(うへ)に圮(くづさ)れずしては遺(のこ)らじ
3イエス橄欖山(かんらんざん)に坐(ざ)し給(たま)へるとき弟子(でし)ひそかに來(きた)りて曰(いひ)けるは何(いづれ)の時(とき)このこと有(ある)や又爾(なんぢ)の來(きた)る兆(しるし)と世(よ)の末(をはり)の兆(しるし)は如何(いか)なるぞや我儕(われら)に告(つげ)たまへ
4イエス答(こたへ)て彼等に曰(いひ)けるは爾曹(なんぢら)人に欺(あざむ)かれざるやう愼(つつしめ)よ
5盖(そは)おほくの人(ひと)わが名(な)を冐(をかし)きたり我(われ)はキリストなりと云(いひ)て多(おほく)の人を欺(あざむ)くべし
6又(また)なんぢら戰(いくさ)と戰(いくさ)の風聲(うはさ)をきかん然(され)ど愼(つつしみ)て懼(おそ)るる勿(なか)れ此等(これら)の事は皆(みな)ある可(べき)なり然(しかれ)ども末期(をはり)は未(いま)だ至(いた)らず
7民(たみ)おこりて民(たみ)をせめ國(くに)は國をせめ饑饉(ききん)疫病(えきびやう)地震(ぢしん)ところどころに有(ある)ならん
8是(これ)みな禍(わざはひ)の始(はじめ)なり
9其(その)とき人(ひと)なんぢらを患難(なやみ)に付(わた)し爾曹(なんぢら)を殺(ころ)すべし又(また)なんぢら我名(わがな)の爲に萬民(ばんみん)に憎(にくま)れん
10此(この)とき許多(おほく)のもの礙(つまづき)かつ互(たがひ)に付(わた)し互に憾(うら)むべし
11また僞(にせ)預言者おほく起(おこり)て多の人を欺(あざむ)かん
12また不法(ふはふ)みつるに因(より)て多(おほく)の人の愛情(あいじやう)ひややかに爲(なる)べし
13然(され)ど終(をはり)まで忍(しの)ぶ者は救(すくは)るることを得(え)ん
14また天國(てんこく)の此福音(ふくいん)を萬民(ばんみん)に證(あかし)せん爲(ため)に普(あまね)く天下(てんか)に宣傳(のべつたへ)られん然(しか)るのち末期(をはり)いたるべし
15是故に預言者(よげんしや)ダニエルに託(より)て言(いは)れたる所の殘暴(あらす)にくむべきもの聖處(せいしよ)に立(たつ)を見(み)ば(讀者(よむもの)よく思(おも)ふべし)
16厥時(そのとき)ユダヤにをる者は山(やま)に遁(のが)れよ
17屋上(やのうへ)に在(をる)ものは其家(いへ)の物(もの)を取(とら)んとて下(おる)る勿(なか)れ
18田(はた)にをる者は其衣(ころも)を取(とら)んとて歸(かへ)る勿れ
19其日(ひ)には孕(はら)める者と乳(ち)を飮(のま)する婦(をんな)は禍(わざはひ)なる哉(かな)
20爾曹冬(ふゆ)または安息日(あんそくにち)に逃(にぐ)ることを免(まぬか)れん爲に祈(いの)れ
21其(その)とき大(おほい)なる患難(なやみ)あり此(かく)の如き患難(なやみ)は世(よ)の始(はじめ)より今(いま)に至(いた)るまで有(あら)ざりき又後(のち)にも有(あら)じ
22若(もし)その日(ひ)を少(すくな)くせられずば一人(ひとり)だに救(すくは)るる者(もの)なからん然(され)ど選(えらば)れし者の爲に其日(ひ)は少(すくな)くせらるべし
23其時(そのとき)もしキリスト此處(ここ)にあり彼處(かしこ)にありと爾曹(なんぢら)にいふ者あるとも信(しん)ずる勿(なか)れ
24そは僞(にせ)キリスト僞預言者(よげんしや)たち起(おこり)て大なる休徴(しるし)と異能(ふしぎなるわざ)を行(おこな)ひ選(えらば)れたる者をも欺(あざむ)くことを得(え)ば之を欺(あざむ)く可(べけ)れば也
25われ預(あらか)じめ爾曹(なんぢら)に之を告(つぐ)
26若(もし)キリスト野(の)に在(あり)といふ者あるとも出(いづ)る勿れ室(へや)に在(あり)と云(いふ)もの有(ある)とも信(しん)ずる勿(なか)れ
27そは電(いなづま)の東より出(いで)て西(にし)にまで閃(ひらめ)くが如く人の子も來(きた)るべければ也(なり)
28それ屍(しかばね)のある處(ところ)には鷲(わし)あつまらん
29此等(これら)の日の患難(なやみ)の後(のち)ただちに日(ひ)は晦(くら)く月(つき)は光(ひかり)を失(うしな)ひ星(ほし)は空(そら)よりおち天(てん)の勢(いきほ)ひ震(ふる)ふべし
30其とき人の子の兆(しるし)天に現(あらは)るまた地上(ちじやう)にある諸族(しよぞく)は哭哀(なげきかなし)み且(かつ)人の子の權威(けんゐ)と大(おほい)なる榮光(えいくわう)をもて天(てん)の雲(くも)に乘來(のりきた)るを見(み)ん
31又(また)その使等(つかひたち)を遣(つかは)し箛(らつぱ)の大なる聲(こゑ)を出(いださ)しめて天(てん)の此極(はて)より彼(かの)極まで四方(しはう)より其選(えらば)れし者を集(あつ)むべし○
32夫(それ)なんぢら無花果樹(いちじく)に由て譬(たとへ)を學(まな)べ其枝(えだ)すでに柔(やはら)かにして葉萌(はめぐ)めば夏(なつ)の近(ちか)きを知(しる)
33此(かく)の如(ごと)く爾曹も凡(すべ)て此等(これら)の事を見ば時(とき)ちかく門口(かどぐち)に至(いた)ると知(しれ)
34われ誠(まこと)に爾曹に告ん此等(これら)の事ことごとく成(なる)まで此民(たみ)は廢(うせ)ざるべし
35天地(てんち)は廢(うせ)ん然(され)ど我言(わがことば)は廢(うせ)じ
36その日(ひ)その時(とき)を知(しる)ものは唯(ただ)わが父(ちち)のみ天(てん)の使者(つかひ)も誰(たれ)もしる者なし
37ノアの時(とき)の如く人の子の來(きた)るも亦然(しか)らん
38それ洪水(こうずい)の前(まへ)ノア方舟(はこぶね)にいる日(ひ)までは人々飮食(のみくひ)嫁娶(とつぎめとり)などして
39洪水(こうずい)の來(きた)り悉(ことごと)く之を滅(ほろぼ)すまで知(しら)ざりき此(かく)の如(ごと)く人の子も亦(また)きたらん
40其とき二人田(はた)に在(あら)んに一人(ひとり)は取(とら)れ一人は遺(のこ)さるべし
41二人(ふたり)の婦磨(うす)ひき居(をら)んに一人はとられ一人は遺(のこ)さるべし
42是故に爾曹(なんぢら)の主(しゆ)いづれの時(とき)きたるかを知(しら)ざれば怠(おこた)らずして守(まも)れ
43爾曹(なんぢら)これを知(しれ)もし家(いへ)の主人(あるじ)ぬすびと何(いづれ)の時(とき)きたるかを知(しら)ば其家(いへ)を守(まもり)て破(やぶ)らすまじ
44然(され)ば爾曹もまた預備(そなへ)せよ意(おもは)ざる時に人(ひと)の子(こ)きたらんと爲(すれ)ばなり
45時(とき)に及(および)て糧(かて)を彼等(かれら)に予(あたへ)さする爲(ため)に主人(あるじ)がその僕等(しもべども)の上(うへ)に立(たて)たる忠義(ちゆうぎ)にして智僕(さときしもべ)は誰(たれ)なる乎(か)
46その主人(あるじ)の來(きた)らん時(とき)かくの如(ごと)く勤(つとむ)るを見(みら)るる僕は福(さいはひ)なり
47我(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告ん其所有(もちもの)をみな彼(かれ)に督(つかさど)らすべし
48若(もし)その惡僕(あしきしもべ)おのが心に我(わ)が主人(あるじ)の來(きた)るは遲(おそか)らんと意(おも)ひ
49その朋輩(はうばい)を打撻(うちたた)きて酒(さけ)に醉(よひ)たる者(もの)どもと共(とも)に飮食(のみくひ)し始(はじめ)なば
50その僕(しもべ)の主人(あるじ)おもはざるの日(ひ)しらざるの時に來(きた)りて
51之を斬殺(きりころ)し其報(むくい)を僞善者(ぎぜんしや)と同(おなじ)うすべし其處(そこ)にて哀哭(かなしみ)切齒(はがみ)すること有(あら)ん
馬太傳 第23章
1厥時(そのとき)イエス人々と弟子(でし)とに告(つげ)て曰けるは
2學者(がくしや)とパリサイの人(ひと)はモーセの位(くらゐ)に坐(ざ)す
3故(ゆゑ)に凡(すべ)て彼等が爾曹(なんぢら)に言(いふ)ところを守(まもり)て行(おこな)ふべし然(され)ど彼等が行(おこな)ふ所を爲(なす)こと勿(なか)れ盖(そは)かれらは言(いふ)のみにして行(おこな)はざれば也
4また彼等は重(おもく)かつ負(おひ)がたき荷(に)を括(くくり)て人の肩(かた)に負(おは)せ己は一(ひとつ)の指(ゆび)をもて之を動(うごか)すことすら好(このま)ず
5彼等の行(おこなひ)は凡(すべ)て人に見(みら)れんが爲(ため)にする也(なり)その佩經(ふだ)を幅闊(はばひろく)し其衣(ころも)の裾(すそ)を大(おほい)にし
6また筵席(ふるまひ)の上座(かみざ)會堂の高座(かうざ)
7市上(まち)の問安(あいさつ)人々よりラビラビと稱(となへ)られんことを好(この)む
8爾曹(なんぢら)はラビの稱(となへ)を受(うく)ること勿(なか)れ盖(そは)なんぢらの師(し)は一人すなはちキリストなり爾曹はみな兄弟(きやうだい)なり
9また地(ち)にある者を父(ちち)と稱(となふ)ること勿れ爾曹の父(ちち)は一人すなはち天に在(いま)す者なり
10また導師(だうし)の稱(となへ)を受(うく)ること勿れ盖(そは)なんぢらの導師(だうし)は一人すなはちキリストなり
11爾曹(なんぢら)のうち大(おほい)なる者は爾曹の僕(しもべ)と爲(なる)べし
12凡(おほよ)そ自己(みづから)を高(たかう)する者は卑(ひくく)せられ自己(みづから)を卑(ひくく)する者は高(たかく)せられん○
13噫(ああ)なんぢら禍(わざはひ)なるかな僞善(ぎぜん)なる學者(がくしや)とパリサイの人よ盖(そは)なんぢら天國を人(ひと)の前(まへ)に閉(とぢ)て自(みづか)ら入(いら)ず且(かつ)いらんとする者の入(いる)をも許(ゆる)さざれば也
14噫(ああ)なんぢら禍(わざはひ)なるかな僞善(ぎぜん)なる學者(がくしや)とパリサイの人よ盖(そは)なんぢら嫠婦(やもめ)の家(いへ)を呑(のみ)いつはりて長(なが)き祈(いのり)をなす之に由(より)て爾曹最(もつと)も重刑(おもきつみ)を受(うく)べければ也
15ああ禍(わざはひ)なるかな僞善(ぎぜん)なる學者とパリサイの人よ盖(そは)なんぢら徧(あまね)く水陸(うみやま)を歴巡(へめぐ)り一人(ひとり)をも己(おの)が宗旨(しうし)に引入(ひきいれ)んとす既(すで)に引入(ひきいる)れば之を爾曹よりも倍(ばい)したる地獄(ぢごく)の子と爲(なせ)り
16噫(ああ)なんぢら禍(わざはひ)なるかな瞽者(めしひ)なる相(てびき)よ爾曹はいふ人(ひと)もし殿(みや)を指(さし)て誓(ちか)はば事(こと)なし殿(みや)の金(こがね)を指(さし)て誓(ちか)はば背(そむく)べからずと
17愚(おろか)にして瞽(めしひ)なる者よ金(こがね)と金を聖(きよ)からしむる殿(みや)とは孰(いづれ)か尊(たふと)き
18又(また)いふ人もし祭(まつり)の壇(だん)を指(さし)て誓(ちか)はば事なし其上(うへ)の禮物(そなへもの)を指(さし)て誓(ちか)はば背(そむく)べからずと
19愚(おろか)にして瞽(めしひ)なる者よ禮物(そなへもの)と禮物(そなへもの)を聖(きよ)からしむる祭(まつり)の壇(だん)とは孰(いづれ)か尊(たふと)き
20それ祭(まつり)の壇(だん)を指て誓(ちか)ふ者は祭(まつり)の壇(だん)および其上(うへ)の凡(すべて)の物(もの)を指て誓(ちか)ふなり
21また殿(みや)を指て誓(ちか)ふ者は殿(みや)および其中(うち)に在(いま)す者を指て誓(ちか)ふなり
22また天(てん)を指て誓(ちか)ふ者は神の寶座(みくらゐ)および其上(うへ)に坐(ざ)する者を指(さし)て誓ふなり○
23噫(ああ)なんぢら禍(わざはひ)なるかな僞善(ぎぜん)なる學者とパリサイの人よ盖(そは)なんぢら薄荷(はつか)茴香(ういきやう)馬芹(まきん)の十分(じふぶん)の一(いち)を取納(とりをさめ)て律法(おきて)の最(もつと)も重(おも)き義(ぎ)と仁(じん)と信(しん)とを爾曹は廢(すつ)これ行(おこな)ふ可(べき)もの也かれも亦廢(すつ)べからざる者(もの)なり
24瞽者(めしひ)なる相者(てびき)よ爾曹は蠉(ぼうふり)を漉出(こしいだ)して駱駝(らくだ)を呑(のむ)もの也
25ああ禍(わざはひ)なるかな僞善(ぎぜん)なる學者(がくしや)とパリサイの人よ爾曹杯(さかづき)と盤(さら)の外(そと)を潔(きよく)して内(うち)には貪欲(むさぼり)と淫欲(いんよく)とを充(みた)せり
26瞽者(めしひ)なるパリサイの人よ爾曹まづ杯と盤(さら)の内(うち)を潔(きよく)せよ然(さら)ばその外(そと)も亦(また)きよまるべし○
27噫(ああ)なんぢら禍(わざはひ)なる哉僞善(ぎぜん)なる學者(がくしや)とパリサイの人よ爾曹は白(しろ)く塗(ぬり)たる墓(はか)に似(に)たり外(そと)は美(うるは)しく見(みゆ)れども内(うち)は骸骨(がいこつ)と諸(さまざま)の汚穢(けがれ)にて充(みつ)
28此(かく)の如(ごと)く爾曹もまた外(そと)は義(ただし)く人に見(みゆ)れども内(うち)は僞善と不法(ふはふ)にて充(みつ)
29噫(ああ)なんぢら禍(わざはひ)なるかな僞善(ぎぜん)なる學者とパリサイの人よ爾曹預言者(よげんしや)の墓(はか)をたて義人(ぎじん)の碑(ひ)を飾(かざ)れり
30又(また)いふ我儕(われら)もし先祖(せんぞ)の時にあらば預言者の血(ち)を流(なが)すことに與(くみ)せざりしをと
31然(され)ば爾曹は預言者(よげんしや)を殺(ころし)し者の裔(すゑ)なることを自(みづか)ら證(あかし)す
32なんぢら先祖(せんぞ)の量(ますめ)を充(みた)せ
33蛇蝮(へびまむし)の類(たぐひ)よ爾曹いかで地獄(ぢごく)の刑罰(けいばつ)を免(まぬか)れんや
34是故(このゆゑ)に我(われ)爾曹に預言者と智者(ちしや)と學者を遣(つかは)さんに或(あるひ)は之を殺(ころ)し又十字架(じふじか)に釘(つけ)或は其會堂(くわいだう)にて之を鞭(むちう)ち或(あるひ)は邑(まち)より邑(まち)へ逐苦(おひくるし)めん
35そは義(ぎ)なるアベルの血(ち)より殿(みや)と祭(まつり)の壇(だん)の間(あひだ)にて爾曹が殺(ころし)しバラキアの子ザカリアの血に至るまで地に流(なが)したる義人(ぎじん)の血は凡(すべ)て爾曹に報來(むくいきた)らんが爲なり
36われ誠(まこと)に爾曹に告ん此事(このこと)みな此代(よ)に報來(むくいきた)るべし
37噫(ああ)エルサレムよエルサレムよ預言者を殺(ころ)し爾に遣(つかは)さるる者を石(いし)にて擊(うつ)ものよ母雞(めんどり)の雛(ひな)を翼(つばさ)の下(した)に集(あつむ)る如く我(われ)なんぢの赤子(こども)を集(あつめ)んとせしこと幾次(いくたび)ぞや然(され)ど爾曹は好(このま)ざりき
38視(み)よ爾曹の家(いへ)は荒地(あれち)となりて遺(のこさ)れん
39われ爾曹に告ん主(しゆ)の名(な)に託(より)て來(きた)る者は福(さいわひ)なりと爾曹(なんぢら)の云(いは)んとき至(いた)るまでは今より我(われ)を見(み)ざるべし
馬太傳 第22章
1イエス彼等に答(こたへ)てまた譬(たとへ)を語(かた)りけるは
2天國(てんこく)は或王(あるわう)その子(こ)の爲に婚筵(こんえん)を設(まうく)るが如(ごと)し
3婚筵(こんえん)に請(まねき)おける者(もの)を迎(むかへ)ん爲に僕(しもべ)たちを遣(つかは)ししかど彼等(かれら)きたることを好(この)まず
4又(また)ほかの僕(しもべ)を遣(つかは)さんとして曰(いひ)けるは我(わ)が筵(ふるまひ)すでに備(そなは)れり我(わ)が牛(うし)また肥畜(こえたるけもの)をも宰(ほふ)りて盡(ことごと)く備(そなは)りたれば婚筵(こんえん)に來(きた)れと請(まねき)たる者に言(いへ)
5然(しかれ)ども彼等(かれら)かへりみずして去(さり)ぬ其一人(ひとり)は己(おのれ)の田(はたけ)にゆき一人は己の貿易(あきなひ)に往(ゆけ)り
6他(ほか)の者等(ものども)はその僕(しもべ)を執(とら)へ辱(はづか)しめて殺(ころ)せり
7王(わう)これを聞(きき)て怒(いか)り軍勢(ぐんぜい)を遣(つかは)して其殺(ころ)せる者を亡(ほろぼ)し又(また)その邑(まち)を燒(やき)たり
8是(ここ)に於(おい)てその僕等(しもべども)に曰けるは婚筵(こんえん)すでに備(そなは)れども請(まねき)たる者は客(きやく)となるに堪(たへ)ざる者なれば
9衢(ちまた)に往(ゆき)て遇(あふ)ほどの者を婚筵(こんえん)に請(まね)け
10その僕途(みち)に出(いで)て善者(よきもの)をも惡者(あしきもの)をも遇(あふ)ほどの者を悉(ことごと)く集(あつめ)ければ婚筵(こんえん)の客充滿(じゆうまん)す
11王(わう)客を見(み)んとて來(きた)りけるに茲(ここ)に一人の禮服(れいふく)を着(き)ざる者あるを見(み)て
12之(これ)に曰けるは友(とも)よ如何(いか)なれば禮服(れいふく)を着(き)ずして此處(ここ)に來(きた)る乎(か)かれ默然(もくねん)たり
13遂(つひ)に王僕(しもべ)に曰けるは彼(かれ)の手足(てあし)を縛(しば)りて外(そと)の幽暗(くらき)に投(なげ)いだせ其處(そこ)にて哀(かなし)みまた切齒(はがみ)すること有(あら)ん
14それ召(よば)るる者は多(おほ)しと雖(いへど)も選(えらば)るる者は少(すく)なし○
15此時(このとき)パリサイの人いでて如何(いかに)してか彼を言誤(いひあやま)らせんと相謀(あひはか)り
16その弟子(でし)とヘロデの黨(ともがら)を遣(つかは)して云(いは)せけるは師(し)よ爾は眞(まこと)なる者なり眞(まこと)をもて神の道(みち)を敎(をしふ)また誰(たれ)にも偏(かたよ)らざることを我儕は知(しる)そは貌(かたち)に由て人(ひと)を取(とら)ざれば也
17然(され)ば貢(みつぎ)をカイザルに納(をさむ)るは善(よき)や惡(あしき)や爾いかに意(おも)ふか我儕に告(つげ)よ
18イエスその惡(あく)を知(しり)て曰けるは僞善者(ぎぜんしや)よ何(なん)ぞ我(われ)を試(こころ)むるや
19貢(みつぎ)の銀錢(かね)を我に見(み)せよ彼等(かれら)デナリ一(ひとつ)をイエスに携來(もちきた)りしに
20之に曰(いひ)けるは此像(かた)と號(しるし)は誰(たれ)か
21答てカイザル也といふ是(ここ)に於(おい)てイエス彼等に曰(いひ)けるは然(さら)ばカイザルの物(もの)はカイザルに歸(かへ)しまた神の物(もの)は神に歸(かへ)すべし
22彼等(かれら)之をきき奇(き)としてイエスを去(さり)ゆけり○
23復生(よみがへり)なしと言(いひ)なせるサドカイの人この日(ひ)イエスにきたり問(とふ)て
24曰(いひ)けるは師(し)よモーセの云(いへ)るに人もし子(こ)なくして死(しな)ば兄弟(きやうだい)その妻(つま)を娶(めと)りて子(こ)をうみ兄弟(きやうだい)の後(あと)を嗣(つが)すべしと
25茲(ここ)に我儕(われら)の中に兄弟(きやうだい)七人ありしが兄(あに)めとりて死(しに)子なきが故(ゆゑ)に其妻(つま)を次子(おとうと)に遺(おく)れり
26その二(に)その三(さん)その七(しち)まで皆然(しか)す
27後(のち)のひに婦(をんな)もまた死(しに)たり
28甦(よみがへ)るときは此婦(をんな)七人のうち誰(たれ)の妻と爲(なる)べきか是(これ)みな彼を娶(めとり)し者なれば也
29イエス答(こたへ)て彼等に曰けるは爾曹聖書(せいしよ)をも神の能力(ちから)をも知(しら)ざるに由(より)て謬(あやま)れり
30それ甦(よみがへ)るときは娶(めと)らず嫁(とつが)ず天にある神の使等(つかひたち)の如(ごと)し
31死(しに)し者の甦(よみがへ)ることに就(つき)ては爾曹(なんぢら)に神の告(つげ)たまひし言(ことば)に
32我(われ)はアブラハムの神(かみ)イサクの神ヤコブの神なりとあるを未(いま)だ讀(よま)ざる乎(か)そもそも神(かみ)は死(しに)し者の神に非(あら)ず生(いけ)る者の神なり
33人々これを聞(きき)て其訓(をしへ)を驚(おどろ)けり○
34イエスサドカイの人をして口(くち)を塞(ふさ)がしめたりと聞(きき)てパリサイの人一處(ひとつところ)に集(あつま)りけるが
35その中(うち)なる一人の敎法師(けうはふし)イエスを試(こころ)みん爲に問(とふ)て曰けるは
36師(し)よ律法(おきて)のうち何(いづれ)の誡(いましめ)か大なる
37イエス答けるは爾(なんぢ)心を盡(つく)し精神(せいしん)を盡(つく)し意(こころばせ)を盡し主(しゆ)なる爾の神(かみ)を愛(あい)すべし
38これ第一(だいいち)にして大(おほい)なる誡(いましめ)なり
39第二(だいに)も亦(また)これに同(おな)じ己(おのれ)の如く爾の隣(となり)を愛すべし
40凡(すべて)の律法(おきて)と預言者(よげんしや)は此二(ふたつ)の誡(いましめ)に因(よれ)り○
41パリサイの人の集(あつま)れる時イエス彼等(かれら)に問(とふ)て曰けるは
42爾曹(なんぢら)キリストについて如何(いかに)おもふ乎(や)これ誰(たれ)の子(こ)なるか彼等イエスに曰(いひ)けるはダビデの裔(こ)なり
43彼等に曰けるは然(さら)ばダビデ靈(みたま)に感(かん)じて何故(なにゆゑ)これを主(しゆ)と稱(とな)へし乎(や)ダビデ言(いふ)
44主(しゆ)わが主に曰(いひ)けるは我(われ)なんぢの敵(てき)を爾の足?(あしだい)となすまで我(わが)みぎに坐(ざ)すべしと
45然(され)ばダビデ既(すで)に之を主(しゆ)と稱(となへ)たれば如何(いかで)その子(こ)ならん乎(や)
46誰一言(たれひとこと)これに答(こたふ)ること能(あた)はず此(この)日より敢(あへ)て又とふ者なかりき
馬太傳 第21章
1かれら橄欖山(かんらんざん)のベツパケに至(いた)りエルサレムに近(ちかづ)ける時イエス二人の弟子(でし)を遣(つかは)さんとして
2彼等(かれら)に曰けるは爾曹(なんぢら)むかふの村(むら)に往(ゆけ)やがて繋(つなぎ)たる驢馬(ろば)の其子(こ)と偕(とも)にあるに遇(あは)ん夫(それ)を解(とき)て我(われ)に牽(ひき)きたれ
3若(もし)なんぢらに何(なに)とか言(いふ)ものあらば主(しゆ)の用(よう)なりと曰(いへ)さらば直(ただち)に之を遣(つかは)すべし
4預言者(よげんしや)の言(ことば)に視(み)よ爾の王(わう)は柔和(にうわ)にして驢馬(ろば)すなはち驢馬の子(こ)に乘(のり)なんぢに來(きた)るとシヲンの女(むすめ)に告(つげ)よと
5云(いへ)るに應(かなは)せん爲(ため)に如此(かく)なせる也
6弟子(でし)ゆきてイエスの命(めい)ぜし如(ごと)くなし
7驢馬(ろば)と其子(こ)を牽(ひき)きたり己の衣(ころも)をその上(うへ)に置(おき)ければイエスこれに乘(のれ)り
8衆人(ひとびと)おほくは其衣(ころも)を途(みち)に布(しき)あるひは樹枝(きのえだ)を伐(きり)て途(みち)に布(しき)ぬ
9かつ前(まへ)にゆき後(あと)に從(したが)ふ人々呼(よび)いひけるはダビデの裔(こ)ホザナよ主(しゆ)の名(な)に託(より)て來(きた)る者は福(さいはひ)なり至上處(いとたかきところ)にホザナよ○
10イエス エルサレムに至(いた)れるとき都城(みやこ)こぞりて竦動(さわだち)いひけるは是誰(たれ)ぞや
11衆人(ひとびと)いひけるは此(こ)はガリラヤのナザレより出(いで)たる預言者(よげんしや)イエスなり○
12イエス神の殿(みや)に入(いり)て其中(うち)なる凡(すべて)の賣買(うりかひ)する者を逐出(おひいだ)し兌銀者(りやうがひするもの)の案(だい)鴿(はと)をうる者の椅子(こしかけ)を倒(たふ)し
13彼等(かれら)に曰けるは我家(わがいへ)は祈禱(いのり)の家と稱(となへ)らるべしと錄(しる)さる然(しか)るに爾曹これを盜賊(ぬすびと)の巢(す)となせり
14瞽者(めしひ)跛者(あしなへ)の人々殿(みや)に入てイエスに來(きた)りければ之を醫(いや)しぬ
15祭司(さいし)の長(をさ)と學者(がくしや)たち其行(なし)たまへる奇事(ふしぎなるわざ)を見(み)また兒童輩(こどもら)の殿(みや)にて呼(よば)はりダビデの裔(こ)ホザナよと云(いふ)を聞(きき)て怒(いかり)を含(ふくみ)
16イエスに曰けるは彼等(かれら)が言(いふ)ことを聞(きく)やイエス答て曰(いひ)けるは然(しか)り嬰兒(をさなご)乳哺者(ちのみご)の口(くち)に讃美(さんび)を備(そなへ)たりと錄(しる)されしを未(いま)だ讀(よま)ざる乎(か)
17遂(つひ)に彼等を離(はな)れ都城(みやこ)を出(いで)てベタニヤに往(ゆき)そこに宿(やど)れり○
18翌(あくる)あさ都城(みやこ)へ返(かへ)るとき飢(うゑ)ければ
19路(みち)の旁(ほとり)にある一(ひとつ)の無花果(いちじく)の樹(き)を見て其處(そのところ)に來(きた)りしに葉(は)の他(ほか)に何(なに)も見(みえ)ざりしかば今(いま)よりのち永久(いつまで)も果(み)を結(むす)ぶことを得ざれと之に曰(いひ)たまひければ無花果立刻(たちどころ)に枯(かれ)ぬ
20弟子(でし)これを見て奇(あやし)み曰けるは無花果(いちじく)の枯(かる)ること何(いか)に速(はやき)や
21イエス答(こたへ)て彼等に曰けるは我(われ)まことに爾曹に告(つげ)んもし信仰(しんかう)ありて疑(うたが)はずば此無花果(いちじく)に於(おけ)るが如(ごとき)耳(のみ)ならず此(この)山に命(めい)じ此(ここ)より移(うつ)されて海(うみ)に入(いれ)よと云(いふ)とも亦成(なら)ん
22且(かつ)なんぢら信(しん)じて祈(いの)らば求(ねが)ふ所(ところ)ことごとく得(う)べし
23イエス殿(みや)に入て敎(をしへ)たるとき祭司(さいし)の長(をさ)および民(たみ)の長老(としより)たち來(きた)り曰けるは何(なに)の權威(けんゐ)を以(も)て此事をなすや誰(たが)この權威(けんい)を爾に予(あたへ)しや
24イエス答て彼等(かれら)に曰けるは我も一言(ひとこと)なんぢらに問(とは)ん我にその事(こと)を告(つげ)なば我も何(なに)の權威をもて之を行(なす)といふことを爾曹に曰(いふ)べし
25ヨハネのバプテスマは何處(いづこ)よりぞ天(てん)よりか人(ひと)よりか彼等(かれら)たがひに論(ろん)じ曰けるは若(も)し天よりと云(いは)ば然(さら)ば何(なに)ゆゑ信ぜざるかと云(いは)ん
26もし人よりと云(いは)ば我儕民(たみ)を畏(おそ)る蓋(そは)みなヨハネを預言者と爲(すれ)ばなり
27遂(つひ)に答て知(しら)ずと曰(いふ)イエス彼等(かれら)に曰けるは我も何(なに)の權威を以(も)て之を行(なす)か爾曹に語(かた)らじ
28爾曹(なんぢら)いかに意(おも)ふや或人(あるひと)二人の子ありしが長子(あに)に來(きた)りて曰(いひ)けるは子(こ)よ今日(けふ)わが葡萄園(ぶだうばたけ)に往(ゆき)て働(はたら)け
29答(こたへ)て否(いな)と曰(いひ)しがのち悔(くい)て往(ゆき)たり
30また次子(おとうと)にも前(まへ)の如く曰(いひ)けるに答て君(きみ)よ我往(ゆく)べしと曰(いひ)しが遂(つひ)に往(ゆか)ざりき
31此(この)二人のもの孰(いづれ)か父の旨(むね)に遵(したが)ひし彼等(かれら)いひけるは長子(あに)なりイエス彼等に曰けるは誠(まこと)に爾曹に告ん税吏(みつぎとり)および娼妓(あそびめ)は爾曹より先(さき)に神の國に入(いる)べし
32夫(それ)ヨハネ義道(ただしきみち)をもて來(きた)りしに爾曹(なんぢら)これを信(しん)ぜず税吏娼妓(あそびめ)は之を信(しん)じたり爾曹これを見(み)てなほ悔改(くいあらた)めず彼(かれ)を信ぜざりき○
33また一(ひとつ)の譬(たとへ)を聞(きけ)ある家(いへ)の主人葡萄園(ぶだうばたけ)を樹(つく)り籬(まがき)を環(めぐ)らし其中(なか)に酒榨(さかぶね)をほり塔(ものみ)をたて農夫(のうふ)に貸(かし)て他(ほか)の國(くに)へ往(ゆき)しが
34果期(みのりどき)ちかづきければ其果(み)を收(とら)ん爲に僕(しもべ)を農夫(のうふ)のもとに遣(つかは)せり
35農夫(のうふ)ども其僕等(しもべたち)を執(とら)へ一人を鞭(むちう)ち一人を殺(ころ)し一人を石(いし)にて擊(うて)り
36また他(ほか)の僕(しもべ)を前(まへ)よりも多(おほ)く遣(つかは)しけるに之にも前(まへ)の如(ごと)くなせり
37我子(わがこ)は敬(うやま)ふならんと謂(いひ)て終(つい)に其子(こ)を遣(つかは)ししに
38農夫等(のうふども)その子(こ)を見て互(たがひ)に曰けるは此(こ)は嗣子(あとつぎ)なり率(いで)これを殺(ころ)して其産業(さんげふ)をも奪(とる)べしと
39即(すなは)ち之を執(とら)へ葡萄園より逐出(おひいだ)して殺(ころ)せり
40然(され)ば葡萄園の主人(あるじ)きたらん時(とき)にこの農夫(のうふ)に何(なに)を爲(なす)べき乎(か)
41彼等(かれら)イエスに曰けるは此等(これら)の惡人(あしきもの)を甚(いた)く討滅(うちほろぼ)し期(とき)に及(および)てその果(み)を納(をさむ)る他(ほか)の農夫(のうふ)に葡萄園を貸予(かしあた)ふべし
42イエス彼等(かれら)に曰けるは聖書(せいしよ)に工匠(いへつくり)の棄(すて)たる石(いし)は家(いへ)の隅(すみ)の首石(おやいし)となれり是主(しゆ)の行給(なしたまへ)ることにして我儕(われら)の目に奇(あやし)とする所(ところ)なりと錄(しる)されしを未(いま)だ讀(よま)ざる乎(か)
43是故に我(われ)なんぢらに告(つげ)ん神の國を爾曹(なんぢら)より奪(うばひ)その果(み)を結(むす)ぶ民(たみ)に予(あたへ)らるべし
44この石(いし)の上(うへ)に墜(おつ)るものは壞(やぶれ)この石上(うへ)に墜(おつ)れば其(その)もの碎(くだ)かるべし
45祭司(さいし)の長等(をさたち)およびパリサイの人(ひと)かれの譬(たとへ)を聞(きき)おのれらを指(さし)て言(いへ)るを識(しり)
46イエスを執(とら)へんと欲(おも)ひ謀(はかり)しかど唯(ただ)民を畏(おそれ)たり蓋(そは)人々かれを預言者(よげんしや)とすれば也(なり)
馬太傳 第20章
1それ天國は朝(あさ)はやく出(いで)て葡萄園(ぶだうばたけ)に工人(はたらくもの)を雇(やと)ふ主人(あるじ)の如(ごと)し
2工人(はたらくもの)には一日に銀一枚(ぎんいちまい)を予(あたへ)んと約束(やくそく)をなし彼等(かれら)を葡萄園に遣(つかは)せり
3また九時(くじ)ごろ出(いで)て街(ちまた)に徒(むなし)く立(たて)る者を見(み)て
4爾曹(なんぢら)も葡萄園にゆけ相當(さうたう)の價(あたひ)を予(あたへ)んと彼等(かれら)に曰ければ則(すなは)ち往(ゆけ)り
5また十二時(じうにじ)と三時(さんじ)ごろ出(いで)て前(まへ)の如く行(なせ)り
6五時(ごじ)ごろ出(いで)て又(また)ほかの立(たて)る者に遇(あひ)て曰けるは何(なに)ゆゑ終日(ひねもす)ここに徒(むなし)く立(たつ)や
7之(これ)に答て曰けるは我儕(われら)を雇(やと)ふ者なきに因(より)てなり彼等(かれら)に曰けるは爾曹も葡萄園にゆけ相當(そうたう)の價(あたひ)を得(う)べし
8日暮(ひくる)るとき葡萄園の主人(あるじ)その家宰(いへつかさ)に曰けるは勞力(はたらき)たる者等(ものたち)を呼(よび)て後(のち)に雇(やと)へる者を始(はじめ)とし先(さき)の者にまで價(あたひ)を給(はら)へよ
9五時(ごじ)ごろに雇(やと)はれし者(もの)ども來(きた)りて銀一枚(いちまい)づつを受(うけ)たり
10先(さき)の者(もの)ども來(きた)りて我儕(われら)は多(おほ)く受(うく)るならんと意(おも)ひしに亦(また)銀一枚(いちまい)づつを受(うく)
11これを受(うけ)て主人(あるじ)を怨(うらみ)つぶやきけるは
12この後至者(のちのもの)の勞力(はたらき)たるは一時(いちじ)ばかりなるに終日(ひねもす)くるしみを任(おひ)あつさに當(あへ)る我儕と均(ひと)しく之をなせり
13主人(あるじ)その一人(ひとり)に答て曰(いひ)けるは友(とも)よ我(われ)なんぢに不義(ふぎ)をせず爾と銀(ぎん)一枚の約束(やくそく)をなしたるに非(あら)ずや
14爾(なんぢ)のものを取(とり)て往(ゆけ)われ亦(また)この後至者(のちのもの)にも爾の如(ごと)く予(あた)ふべし
15我物(わがもの)を以(も)て我(わが)おもふ如(ごと)く行(なす)は宜(よか)らず乎(や)わが善(よき)に因(より)て爾の目(め)あしき乎(か)
16此(かく)の如(ごと)く後(あと)の者は先(さき)に先(さき)の者は後(あと)になるべし夫(それ)よばるる者(もの)は多(おほ)しと雖(いへど)も選(えらば)るる者は少(すく)なし○
17イエス エルサレムに上(のぼ)るとき途間(みち)にて人(ひと)を離(はな)れ十二弟子(でし)を伴(ともな)ひて彼等(かれら)に曰けるは
18我等(われら)エルサレムに上(のぼ)り人の子は祭司(さいし)の長(をさ)と學者等(がくしやたち)に賣(わた)されん彼等(かれら)これを死罪(しざい)に定(さだ)め
19また凌辱鞭(なぶりむちう)ち十字架に釘(つけ)ん爲に異邦人(いはうじん)に解(わた)すべし又第三日(みつかめ)に甦(よみが)へるべし○
20其時(そのとき)ゼベダイの子等(こたち)の母(はは)その子(こ)と偕(とも)にイエスに來(きた)り拜(はい)して彼に求(もとむ)ること有(あり)ければ
21之(これ)に曰けるは何(なに)を欲(ねが)ふかイエスに曰けるは此二人(ふたり)の我子(わがこ)を爾の國に於(おい)て一人は爾の右(みぎ)一人は爾の左(ひだり)に坐(すわ)ることを命(めい)ぜよ
22イエス答(こたへ)て曰けるは爾曹(なんぢら)は求(ねがふ)ところを知(しら)ず爾曹は我(わ)が飮(のま)んとする杯(さかづき)をのみ又(また)わが受(うけ)んとするバプテスマを受得(うけう)るや彼等(かれら)いひけるは能(よく)すべし
23イエス彼等に曰(いひ)けるは誠(まこと)に爾曹は我(わ)が杯(さかづき)を飮(のみ)また我(わが)うくるバプテスマを受(うく)べし然(され)ど我が右左(みぎひだり)に坐(すわ)ることは我が賜(あたふ)べきに非(あら)ず只(ただ)わが父に備(そなへ)られたる者は賜(あたへ)らるべし
24十人の弟子(でし)これを聞て二人の兄弟(きやうだい)を憤(いきどほ)れり
25イエス彼等を召(よび)て曰けるは異邦(いはう)の領主(りやうしゆ)はその民(たみ)を主(つかさ)どり大人(おほいなるもの)どもは彼等(かれら)の上(うへ)に權(けん)を操(とる)これ爾曹が知(しる)ところ也
26然(され)ど爾曹の中(うち)にては然(しか)すべからず爾曹のうち大(おほい)ならんと欲(おも)ふ者は爾曹に役(つかは)るる者となるべし
27また爾曹(なんぢら)のうち首(かしら)たらんと欲(おも)ふ者は爾曹の僕(しもべ)となるべし
28此(かく)の如く人の子の來(きた)るも人(ひと)を役(つか)ふ爲(ため)には非(あら)ず反(かへつ)て人に役(つか)はれ又(また)おほくの人に代(かわり)て生命(いのち)を予(あたへ)その贖(あがなひ)とならん爲(ため)なり○
29彼等エリコを出(いで)し時(とき)おほくの人々イエスに從(したが)へり
30二人の瞽者(めしひ)路(みち)の旁(かたはら)に坐(すわり)をりしがイエスの過(すぐ)ると聞(きき)て呼叫(さけび)いひけるはダビデの裔(こ)主よ我儕(われら)を憫(あはれ)み給(たま)へ
31衆人(ひとびと)これに默(しづま)れと戒(いまし)むれども愈(いよいよ)さけび曰(いひ)けるはダビデの裔(こ)主よ我儕を憫(あはれ)みたまへ
32イエス立止(たちどまり)て之を呼(よび)いひけるは爾曹(なんぢら)われに何(なに)を爲(せ)られんと願(ねが)ふや
33イエスに曰けるは主よ我儕目(め)の啓(ひらか)んことを願(ねが)ふ
34イエス憫(あはれ)みて其目(め)に手を按(つけ)ければ直(ただち)に見(みる)ことを得(え)イエスに從(したが)へり
馬太傳 第19章
1イエス此等(これら)の事を言畢(いひをは)りしときガリラヤを去(さり)てヨルダンの外(むかふ)ユダヤの境(さかひ)に至(いた)りけるに
2多(おほく)の人々從(したが)ひしかば此處(このところ)にて彼等(かれら)を醫(いや)し給(たま)へり
3パリサイの人(ひと)きたりてイエスを試(こころ)み曰(いひ)けるは人なにの故(ゆゑ)に係(かかは)らず其妻(つま)を出(いだ)すは宜(よき)か
4答(こたへ)て彼等に曰けるは元始(はじめ)に人を造(つく)り給(たま)ひし者は之を男女(なんによ)に造(つく)れり
5是故(このゆゑ)に人父母(ちちはは)を離(はな)れて其妻(つま)に合(あひ)二人のもの一體(いつたい)と爲(なる)なりと云(いへ)るを未(いま)だ讀(よま)ざるか
6然(され)ばはや二(ふたつ)には非(あら)ず一體(いつたい)なり神の合(あは)せ給(たま)へる者は人(ひと)これを離(はな)すべからず
7イエスに曰(いひ)けるは然(され)ば離緣狀(りえんじやう)を予(あたへ)て妻を出(いだ)せとモーセが命(めい)ぜしは何(なに)ぞや
8彼等(かれら)に曰けるはモーセは爾曹(なんぢら)の心の不情(つれなき)に因(より)て妻を出(いだ)すことを容(ゆる)したる也されど元始(はじめ)は如此(かく)あらざりき
9我(われ)なんぢらに告(つげ)んもし姦淫(かんいん)の故(ゆゑ)ならで其妻(つま)を出し他(ほか)の婦(をんな)を娶(めと)る者は姦淫を行(おこな)ふなり又(また)いだされたる婦(をんな)を娶(めと)る者も姦淫を行(おこな)ふなり
10弟子等(でしたち)イエスに曰けるは若(も)し人(ひと)妻に於て此(かく)の如(ごと)くば娶(めとら)ざるに若(しか)ず
11彼等(かれら)に曰けるは此言(ことば)は人(ひと)みな受納(うけいる)ること能(あた)はず唯賦(さづけ)られたる者のみ之を爲(なし)うべし
12それ母(はは)の腹(はら)より生來(うまれつき)たる寺人(じじん)あり又(また)人にせられたる寺人(じじん)あり又天國の爲(ため)に自(みづか)らなれる寺人(じじん)あり之を受納(うけいる)ることを得(うる)ものは受納(うけいる)べし○
13其(その)とき人々イエスの手(て)を按(つけ)て祈(いの)らんことを求(ねが)ひ嬰兒(をさなご)を彼に携來(つれきた)りければ弟子(でし)是(これ)を阻(とどめ)たり
14イエス曰けるは嬰兒(をさなご)を容(ゆる)せ我(われ)に來(きた)ることを禁(いま)しむる勿(なか)れ天國(てんこく)にをる者は此(かく)の如(ごと)き者なり
15即(すなは)ち彼等(かれら)に手(て)を按(つけ)て此(ここ)を去(さり)ぬ○
16或人(あるひと)きたりて彼(かれ)に曰けるは善師(よきし)よ我(われ)かぎりなき生(いのち)を得(え)んが爲には何(なに)の善事(よきこと)を行(なす)べきか
17彼に曰(いひ)けるは何故(なにゆゑ)われを善(よき)と稱(いふ)や一人の外(ほか)に善者(よきもの)はなし即(すなは)ち神なり若(も)し生命(いのち)に入(いら)んと欲(おも)はば誡(いましめ)を守(まも)るべし
18彼(かれ)こたへけるは何(なに)かイエス曰けるは殺(ころ)す勿(なか)れ姦淫(かんいん)する勿(なか)れ盜(ぬす)む勿(なか)れ妄(いつは)りの證(あかし)を立(たつ)る勿れ
19爾(なんぢ)の父と母を敬(うやま)へ又己(おのれ)の如(ごと)く爾の隣(となり)を愛(あい)すべし
20少者(わかきもの)かれに曰(いひ)けるは是(これ)みな我(われ)いとけなきより守(まも)れるものなり何(なに)の虧(かけ)たるところ我(われ)にある乎(や)
21イエス彼に曰(いひ)けるは全(まつた)からん事を欲(おも)はば往(ゆき)て爾が所有(もちもの)を售(うり)て貧者(まずしきもの)に施(ほどこ)せ然(さす)れば天に於(おい)て財(たから)あらん而(しか)して來(きた)り我(われ)に從(したが)へ
22少者(わかきもの)この言(ことば)を聞(きき)て憂(うれ)へ去(さり)ぬ彼は産業(さんげふ)おほいなりければ也(なり)○
23イエスその弟子(でし)に曰けるは誠(まこと)に爾曹(なんぢら)に告ん富者(とめるもの)は天國に入(いる)こと難(かた)し
24また爾曹に告(つげ)ん富者(とめるもの)の神の國に入(いる)よりは駱駝(らくだ)の針(はり)の孔(あな)を穿(とほ)るは却(かへつ)て易(やす)し
25弟子(でし)之を聞(きき)て甚(いた)く驚(おどろ)き曰けるは然(さら)ば誰(たれ)か救(すくひ)を受(うく)べき乎(や)
26イエス彼等(かれら)を見(み)て曰けるは是(これ)人には能(あた)はざる所(ところ)なり然(され)ど神には能(あた)はざる所(ところ)なし○
27此(この)ときペテロ答(こたへ)てイエスに曰けるは我儕一切(いつさい)を棄(すて)て爾に從(したが)へり然(され)ば何(なに)を得(う)べき乎(か)
28イエス彼等(かれら)に曰けるは我(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告ん我(われ)に從(したが)へる爾曹は世(よ)あらたまり人の子榮光(えいくわう)の位(くらゐ)に坐(ざ)する時なんぢらも十二の位(くらゐ)に坐(ざ)してイスラエルの十二の支派(わかれ)を鞫(さばく)べし
29凡(すべ)て我名(わがな)の爲に家宅(いへ)あるひは兄弟(きやうだい)あるひは姉妹(しまい)あるひは父(ちち)あるひは母(はは)あるひは妻(つま)あるひは子(こ)あるひは田疇(たはた)を棄(すつ)る者は百倍(ひやくばい)を受(うけ)かつ窮(かぎり)なき生(いのち)を嗣(つが)ん
30多(おほく)の先(さき)なる者は後(あと)になり後(あと)なる者は先(さき)になるべし